テザーゴールド(XAUT)とは?
仮想通貨市場の進化に伴い、
テザーゴールド(XAUT)は金(ゴールド)連動型ステーブルコインとして注目を集めています。現物の金を価値の裏付けとするこのトークンは、パクソスゴールド(PAXG)と共に人気を二分する存在となっています。テザーゴールドの特徴や仕組み、メリット・デメリットを理解することで、仮想通貨市場における金連動型トークンの可能性を探っていきましょう。
テザーゴールド(XAUT)の基本情報
テザーゴールド(Tether Gold)は、現物の金(ゴールド)の価値に裏付けられたステーブルコインであり、デジタル通貨の安定性と金の保存機能を組み合わせた資産です。テザー社の関連会社TG Commodities Limitedが発行しており、世界最大のステーブルコインであるUSDT(テザー)を提供するプラットフォームの一部として運営しています。
テザーゴールドとは
テザーゴールド(XAUT)とは、2020年にローンチされた金連動型ステーブルコインです。一般的なステーブルコインが米ドルなどの法定通貨に連動させるのに対し、テザーゴールドは1トロイオンス(約31.103グラム)の現物金を裏付けとしています。このXAUTトークンは、スイスの金庫に保管されているロンドン貴金属市場協会(LBMA)の基準をクリアした「グッド・デリバリー・バー」の金を担保としています。各トークンは特定の金バーと紐づけられており、実質的に金の資産を所有していることになります。テザーゴールドは、イーサリアムブロックチェーンの
ERC-20トークンとして発行されており、幅広い方が利用できるようになっています。
XAUTの役割と価値
テザーゴールド(Tether Gold)は、価値保存手段として開発されました。法定通貨はインフレで価値が徐々に減少するのに対し、金は普遍的な価値を持っており、価値を保存する手段のひとつとなっています。テザーゴールド(XAUT)は暗号資産を金に交換可能で現金を経由しなくてもよくなり、多くの人が重宝しています。また、イーサリアム(ETH)のERC-20トークンとして発行しており、幅広く利用できます。2025年3月時点で、XAUTの時価総額は約7億4,400万ドル(約1,100億円)で、金連動型トークンの市場で最大のシェアを占めています。金連動型資産としての時価総額は、市場の拡大とともに着実に成長しており、投資家の間では、経済不確実性の高まりや仮想通貨市場の変動性に対するヘッジとして、金連動型トークンの関心が高まっています。
テザーゴールドの技術的特徴
テザーゴールド(Tether Gold)の技術的特徴は、ブロックチェーン業界の中でも特筆すべきものとなっています。
ERC-20規格のブロックチェーン設計
テザーゴールド(XAUT)はイーサリアムブロックチェーンのERC-20トークンとして発行されています。ERC-20規格で作られたトークンはお互いに互換性があり、対応したウォレットで簡単に使用できるため、アクセスしやすい特徴を持っています。この設計によりイーサリアムネットワーク上の多くのウォレットやDApps(分散型アプリケーション)との互換性が確保され、既存の取引所インフラでも容易に流通できます。テザーゴールドの取引高は、この互換性の高さから様々な取引所で安定した数字を示しています。
金バー紐づけシステム
テザーゴールド(XAUT)の仕組みで特筆すべきは、各XAUTトークンが特定の金バーと紐づけられている点です。テザー社のウェブサイトでは、トークンを保有するイーサリアムアドレスがどの金バーに関連付けられているかを誰でも確認できる透明性を確保しています。トークンが別のアドレスに送金すると、システムは自動的にアドレスと金の資産の割り当てを最適化し、データストレージを最小限に抑えています。例えば、ユーザーが50の異なる販売者から400オンスの金を購入した場合、システムはこれらのトークンを自動的に再割り当てし、単一の完全な金バーに接続します。このシステムにより、各XAUTトークンが常に実際の金の所有権を表す透明性が確保されています。
分割可能性と転送効率
テザーゴールド(XAUT)は0.000001XAUT(1XAUTの100万分の1)という極めて小さな単位での取引が可能で、24時間365日、国境を越えた瞬時の送金ができます。この分割可能性により、従来の金投資では難しかった少額からの投資が可能になっています。物理的な金では不可能な分割取引や小額投資が実現することで、より多くの投資家が金市場にアクセスできるようになりました。XAUTの価格が金価格に連動しながらも、こうした柔軟性を持つことが大きな特徴です。
テザーゴールドの機能とユースケース
テザーゴールド(XAUT)には、いくつかの重要なユースケースがあります。
モバイル性の高い「セーフヘイブン」資産
物理的な金は伝統的に安全な資産と見られていますが、その物理的性質のために、取引と保管が困難で高価になる可能性があります。物理的な金の経済的特性をデジタルトークンに組み合わせることにより、XAUTトークンは物理的資産の保有に関連する多くの困難とコストを排除します。実際の金は保管庫に残っていますが、XAUTは金に関連する所有権と価値の滑らかな世界的移転を可能にします。これにより、金の安全資産としての特性を維持しながら、デジタル通貨の利便性を享受できます。テザーゴールドの価格は金価格にほぼ完全に連動しているため、金市場の動向をそのまま反映します。
流動性・実効性ポートフォリオヘッジ
金融不安に対するヘッジとして、多くの投資家はポートフォリオに金を含めています。しかし、現物の金へのエクスポージャーを得ることは、特に少量を取得しようとする非機関投資家にとって、歴史的に高価で負担となっていました。より低コストの金関連投資商品が利用可能ですが、現物の金が提供するヘッジとしての流動性と有効性に欠けることが多いです。卸売価格で小規模なデノミネーションを可能にすることにより、XAUTは資産クラスとしての現物金へのアクセスを民主化することを目指しています。
主権・中立的な通貨単位
XAUTの最も広範なユースケースの1つは、ソブリン・ニュートラルな通貨単位です。金とビットコイン(BTC)に関連する通貨原則を組み合わせることにより、ユーザーは金の希少性と価格安定性を備えた資産にアクセス可能になります。ビットコインは政治的支持の欠如と検閲に対する抵抗で賞賛を受けることが多いですが、金現物は歴史的に主権中立の通貨単位として機能してきました。BTCと金現物はどちらも中央当局から独立して運営していますが、高い価格変動性は貿易のための信頼できる通貨単位としての使用を妨げています。金ベースの契約と世界的な決済を誰もが利用できるようにすることにより、XAUTトークンは、世界貿易のための新しい実用的な通貨基盤を提供します。テザーゴールドの取引高は、この実用性の高さを反映して安定的に推移しています。
テザーゴールドのメリット・デメリット
テザーゴールド(XAUT)には、従来の金投資と比較して様々な利点と注意点があります。
テザーゴールドのメリット
テザーゴールド(Tether Gold)のメリットは、以下の通りです。
24時間取引できる
従来の市場の場合、取引所が開いている時間だけ取引できます。一方、暗号資産は、ブロックチェーンが稼働している限り24時間取引できます。市場に重大な変化があったら素早く対応できるのが利点です。XAUTの取引高は24時間を通じて分散しており、投資家はタイミングを選ばず取引できます。
少額から投資できる
テザーゴールド(XAUT)は少額から投資可能です。一般的に、金の現物投資ではインゴットを購入します。1トロイオンス未満のものもありますが、金は高価なので投資額が大きくなりがちです。その点、0.000001トロイオンスから購入可能で、XAUTの価格に比例した少額投資が可能です。
保管手数料がかからない
従来の金の現物投資では、カストディアンと呼ばれる管理会社が資産を管理します。カストディアンが安全に金を保管する代わりに、投資家は保管手数料を支払いますが、XAUT保有者は、保管コストが不要です。これは資産の長期保有においてコスト面での大きな利点となります。
持ち運びが簡単
物理的な金は重くてかさばり、安全に移動させるのが難しいですが、XAUTはウォレット間で簡単に送金できます。イーサリアムの厳格なセキュリティを活用しているため、金のバーを安全に振替えるために余分なお金を支払う必要はありません。
現物との交換可能性
テザーゴールド(XAUT)は現物の金と交換可能です。XAUT保有者は十分な量(通常は最低430XAUT程度)を持っていれば、スイス国内の指定場所で現物の金と交換することができます。これにより、デジタル資産でありながら、実物資産としての信頼性も確保されています。
テザーゴールドのデメリット
一方で、テザーゴールド(XAUT)にはいくつかのデメリットも存在します。
送金手数料が高騰するリスク
テザーゴールド(XAUT)はイーサリアムを基礎とするトークンで、イーサリアムのブロックチェーン上で送金ができます。しかし、イーサリアムは、慢性的なスケーラビリティ問題を抱えており、送金手数料が高騰するリスクがあります。送金手数料が高騰すれば、ウォレット間での移動が難しくなります。
価格が乖離する可能性
テザーゴールド(XAUT)は、金価格に連動するような設計です。しかし、それが完全に保証されているわけではありません。XAUTトークンのようなものは、担保となる資産を管理する企業の信用不安やシステムの欠陥などでデペッグする可能性があります。デペッグとは、ステーブルコインが裏付け資産に対して価値を失うことです。現在のところ、テザーゴールド価格がデペッグしたことはありませんが、デペッグするリスクは常にあるので、念頭に入れておくことは重要です。XAUTの価格推移を定期的に確認することで、このリスクを監視することができます。
税制で不利になる可能性
日本における暗号資産の最高税率は、所得税と住民税合わせて55%となっています。一方、ETFや先物契約などは、税率が一律で約20%です。また、現物の金の場合は、特別控除額50万円を除いた利益額に課税され、保有期間が5年を超える場合は、50万円を控除した額のさらに半分に課税を受けます。テザーゴールド(XAUT)は暗号資産に分類されるので、利益額が大きくなると税制で不利になる可能性があります。資産配分を考える際には、この税制面も考慮する必要があります。
償還の制約
テザーゴールド(XAUT)を現物の金と交換するには、
公式ウェブサイトから口座を作って申請する必要があります。十分な量を保有していれば、金インゴットひとつ単位で交換が可能です。交換に必要な枚数は、実際の金インゴットの重量によって増減しますが、交換レートは1XAUTトークン=1トロイオンスに固定されています。金インゴットの重量はバラバラですが、通常、385トロイオンスから415トロイオンスの範囲に収まります。最大430トロイオンスの金インゴットもあるので、確実に交換するには、最低430XAUT以上が必要になるでしょう。
テザーゴールドの仕組み
テザーゴールド(XAUT)は3社(TG Commodities Limited、スイスのディーラー、カストディアン)によって成り立っています。
発行プロセス
TG Commodities Limitedは、ユーザーの入金に応じてテザーゴールドを新規発行します。その後、新規発行されたテザーゴールド(XAUT)を担保するために、スイスのディーラーが国内市場から金を調達し、同じくスイスのカストディアンが管理サービスを提供します。新規発行には、公式ウェブサイトから口座を作る必要があります。本人確認を行い、受け取りのウォレットアドレスを指定し、資金を入金すると、3営業日から5営業日で新規発行のXAUTが手に入ります。しかし、新規発行は、最低50XAUTからとなっており、高額であるため、大口投資家向けとなっています。一般の投資家は、流通するXAUTを取引所で購入するのが現実的です。XAUTの時価総額は常に保有される資産の価値を反映しています。
償還プロセス
ユーザーがテザーゴールド(XAUT)を償還する時には、担保となる金が売却されて、手数料を差し引いた資金が戻る仕組みになっています。このような仕組みでテザーゴールドと担保となる資産のバランスを保っています。交換で手に入る金インゴットは、スイス国内の指定を受けた住所に送付されます。手数料として金の時価総額の0.25%と配送料が請求されます。
投資と市場動向
テザーゴールド(XAUT)は金連動型トークンの分野で主導的な位置を占めています。仮想通貨市場全体では、金連動型トークンの時価総額は1,400億円を突破しており、テザーゴールド(XAUT)はパクソスゴールド(PAXG)と共に市場の大部分を占めています。金の安全資産としての特性から、世界的な経済不安や市場の変動が高まる時期には、テザーゴールドへの関心も高まる傾向があります。特に仮想通貨市場の急落時には、XAUTは比較的安定した価格を保つことが期待されています。テザーゴールドの取引高は市場の不確実性が高まる時期には増加傾向にあります。
今後の見通しと課題
テザーゴールド(XAUT)の将来性は、金市場の動向と仮想通貨業界の発展に大きく依存しています。業界専門家の予測によれば、2025年には金価格が史上最高値に達する可能性があり、これはテザーゴールド価格に追い風となるでしょう。テザーゴールドの時価総額はこの金価格の上昇に伴って増加することが期待されています。一方で、テザーゴールドが直面する問題もあります。テザー社は過去にUSDTの準備金に関して罰金を受けたことがあり、一部の投資家はUSDTに慎重な姿勢を示しています。また、新規発行や償還のための最低要件は現在、一般投資家には高いハードルとなっています。さらに、パクソスゴールド(PAXG)など他の金連動型トークンとの競争も激化しており、各プラットフォームの特徴や利点を明確に示し、より多くのユーザーを獲得していく必要があります。テザーゴールド(XAUT)は、必ずしも金投資の唯一の選択肢ではありません。テザーゴールドは、あくまでも暗号資産市場の資金を金に避難させる、または、ポートフォリオにヘッジをかけるケースで利便性を発揮すると考えられます。XAUTの価格と金価格の連動性は、このようなヘッジ目的において特に重要です。
テザーゴールドの買い方
テザーゴールド(XAUT)は国内取引所を始め、多くの取引所の口座で購入することができます。まずBybitのアカウントを
口座開設し、「取引」から
XAUTの購入を始めることができます。Bybitのトレーディングインターフェースでは、現物取引や信用取引などのさまざまな買い方を選ぶことも可能です。Bybitでは、クレジット/デビットカードや
P2P、他の仮想通貨の取引など、複数の支払い方法でXAUTを購入できます。暗号資産初心者から熟練トレーダーまで、それぞれのニーズに合わせた手法を選べます。取引手数料も透明性の高い形で設定されており、高度なオプションも利用可能です。日本からの利用だと、一度日本国内取引所の口座開設した後、購入した仮想通貨をBybitへ送金してから取引する方がよいでしょう。
Bybitアプリをダウンロードすれば、モバイル端末からも購入可能です。BybitアプリはiOS & Android(スマートフォンやタブレット向けバージョンを利用可能)に対応しており、場所を問わず使用可能です。
まとめ
テザーゴールド(XAUT)は、現物の金に裏付けられた仮想通貨として、デジタル通貨の利便性と金の安定性を組み合わせた革新的な資産です。XAUTの主な特徴は、1XAUTトークンが1トロイオンスの金と同価値で価格が連動し、スイスの金庫に保管されたLBMA認定の金を担保とすることです。イーサリアムブロックチェーンのERC-20トークンとして実装しており、24時間取引可能、優れた分割可能性、保管の簡便さなどの利点があります。一方で、送金手数料の変動リスクや税制面での不利、大口投資家向けの償還条件といった課題も存在します。XAUTの時価総額と価格動向は、金市場の動きを反映しつつも、仮想通貨市場の特性も併せ持っています。テザーゴールドは、デジタル資産の新たな可能性を示すとともに、仮想通貨市場と従来の金市場の橋渡しとしての役割を果たしています。いざという時に使えるかもしれないので、覚えておいて損はないといえるでしょう。
関連記事